水素エネルギー社会(11)JR東日本、水素燃料車両の開発・試験を発表

水素エネルギ社会に関する記事は、前回で終了のつもりでしたが、いくつか情報がありますので、適宜不定期で掲載してまいります。

搭載設計の自由度を考えた場合、乗用車よりはトラックやバスが有利であり、同様に鉄道車両にもメリットがありそうです。鉄道車両への適用状況が気になってた折に、JR東日本の社長会見で、燃料電池車両の製造と試験運転が発表されました。プレス発表形態は、JR東日本・日立製作所・トヨタ自動車の3社共同発表となってます。燃料電池技術はトヨタ、車両製造は日立製作所との分担で、2両編成のHYBARI(写真、出展:JR東日本プレス発表資料)という愛称の車両を開発します。開発車両は、2022年から地元自治体の協力も得て、南武線・鶴見線で試験運転を開始します。

HYBARI(写真、出展:JR東日本プレス発表資料)

なお、2019年6月にもほぼ同様のプレス発表がありました。今回のプレス発表との大きな差は日立製作所が明示された点です。協業関係が具体化したということでしょうか。これにより、3社の分担範囲も明確に示されてます。

JR東日本はすでに、非電化区間向けに、ハイブリッド気動車を実用展開しています。ディーゼルエンジンで発電し、その電力でモータを駆動する方式です。日産のe-powerと同じ駆動方法です。ただ、軽油を使うために、脱炭素とはなりません。

JR東日本でも、2050年に炭酸ガス排出ゼロとすることをコミットメントしており、今後の非電化区間への切り札は、今回の燃料電池車両の可能性が高いところです。ほかに、洋上発電による自社電源開発などもテーマとなっています。

水素タンクは、燃料電池バスと同様に頭上に格納されます。5本×4ユニット 計20本搭載するとされてます。図は 2019年06月04日のプレス発表資料の車両構成図です。

トヨタの燃料電池バス「SORA」は、開示されているイラストでは、10本搭載されています。なお、SORAはトータル600l搭載ということで、1本あたり60lです。一方、このHYBARIのタンクは51lということです。トヨタは複数の種類の水素タンクを開発しており、用途別の選択の上、外販するというビジネスを考えているのかもしれません。特に、中国ビジネス発表の際に、その方向性を強く感じ取りました。

なお、トヨタの水素タンクですから、当然70MPaのタンクです。従来の35MPa級に対して約2倍の搭載量確保が可能です。