分散型光ファイバ計測法 複合材料学会 オンライン大会から

第12回 日本複合材料会議

講演プログラム

空間分解能が高く鋭敏な計測可能な分散型光ファイバを活用して研究発表3件に関してまとめます。

光ファイバ計測に関する3件の発表がありました。

筆者は以前より、光ファイバ計測の有用性に着目してきましたが、今回の発表はその有用性を示すものです。
さらに3件ともレイリー散乱を利用した分散型の光ファイバによる計測です。従来は、土木でよく使われているFBG型の計測例が示されてますが、分散型計測では空間能が1mm程度まで可能です。換言すれば、1mmごとに連続的にひずみが計測できます。CFRPの各種挙動解明にはベストな計測方法と思います。

さらなる詳細は、弊職が講師を務めるCFRP関連のセミナでのご紹介を予定しています。

3D-04
レイリー散乱型分布センサによる剥離進展モニタリング

高知工科大学 ○高坂達郎,高知工科大学[院] 大西一輝,藤岡玄紘

長年にわたり分散型光ファイバを研究している高知工科大学の高坂先生自らのご発表でした。基礎的な材料試験法3種に適用検討しています。

DCB(Double Cantilever Beam)試験

層間剝離計測法のひとつで、開口型、いわゆるモードⅠの層間剝離試験です。クーポン端末に試験片面に平行な人工剥離面(ノッチ)を設け、上下に引き開き剥離面の進展を計測する試験です。
試験片表面に光ファイバを貼り付けて試験することにより、剥離進展位置を鋭敏に計測できることが示されました。

ENF(End Notched Flexure)試験

モードI 面内せん断型に対する層間剝離計測法です。ノッチ付きのクーポン試験片を3点曲げすることにより、ノッチ面に平行にはく離を進展させる試験です。試験片表面に光ファイバを貼り付けて試験することにより、面内剥離の進展末端位置がひずみのピークとして捉えられることを示しています。FENの結果とも位置やひずみ量が一致することも確認しています。

SLJ(単純重ね合. わせ接着継手)試験

2枚のクーポン試験の一部を重なるように張り合わせ、張り合わせ面両側にノッチを設けた試験片での接着力計測法である。荷重増加とともにひずみが増加する挙動、および試験片位置に対するひずみのプロファイルは一致しているものの、FEN解析結果の半分程度のひずみしか計測できなかった。試験片剥離端末位置に対して光ファイバは試験片厚み分離れた位置に貼り付けているため、厚み方向でのひずみ量緩和の影響が示唆される。

東京大学 埋め込み光ファイバ形状センサの開発

東京大学からは、埋め込み光ファイバ形状センサの開発と、その活用検討2件が発表されました。こちらも分散型光ファイバです。光ファイバの長手方向の伸び縮みを引張ないし圧縮ひずみとして計測するものであり直接的に変位は計測できません。変位を計測できる埋め込み光ファイバ形状センサを開発してます。1plyのプリプレグシートの裏と表に光ファイバを貼り付け、裏表のひずみ量の差を変位に換算するというアイデアである。

3C-09
埋め込み光ファイバ形状センサによるL 型CFRP 積層板の固化前変形モニタリング

東京大学[院] ○丹羽翔麻 水口周 武田展雄

断面がL字となるように積層する場合、曲がり部周辺で厚肉化ないし薄肉化が生じます。10mm厚に積層する際の厚み中央部分にL字形状の埋め込み型光ファイバ形状センサを設置し、効果昇温の際の変形挙動を計測した。昇温中90℃でもっとも変形量が大きくなるがこれはFEAの結果とも一致していました。しかし、光ファイバ形状センサではそれ以外の部分でも多数の変形ピークが計測されてます。空間分解能が高い分、微妙なしわも鋭敏に計測した結果と推測されます。

3C-13
自動積層機と光ファイバセンサを用いた複合材製造モニタリング

東京大学[院] ○丹羽翔麻 水口周 武田展雄

プリプレグシートの自動積層の際に、シート間ですき間が生じます。このすき間の変形への影響検討です。埋め込み型センサをこのすき間の直上に貼って計測することで、厚み方向に150μ程度のくぼみ変形が生じることが計測されています。硬化後の成形品表面にもくぼみが生じていることを確認しています。

さらなる詳細は、弊職が講師を務めるCFRP関連のセミナでのご紹介を予定しています。