かつて勤務していたサムスンに関して調べた際の参考書です。
また、元ホンダの方が執筆したデジタル車両車両開発に関する本もご紹介します。

サムスン・クライシス

元サムスンの人事系の専務であった張相秀さんと経済評論家の片山修さんの対話形式の著書です。サムスンの発展の歴史やそのための施策がどんなものであったかを全体的に理解できる本です。私自身のサムスンの経験を再確認したり、背景となる意味合いをも理解でき、あっという間に読み終えた一冊です。内容的にも興味深いものがあり、たとえば、給与体系の詳細も書かれています。多くの部分は、日本との対比で書かれていますので、具体的にイメージしやすいと感じました。

個人的には、サムスンとトヨタを対比的に捉えることで相互を理解できると感じています。この辺りも、トヨタとサムスンの比較論、さらに日本と韓国の国家や国民性の差異なども含めて情報発信したいと考えています。

危機の経営 サムスンを世界一企業に変えた3つのイノベーション

サムスンの元常務でサムスン躍進のための情報系の基盤造りに貢献した吉川さんと失敗学の創設者(?)の東京大学の畑村名誉教授の共著です。吉川さんがなぜサムスンで働いたのか疑問だったのですが、本著でよくわかりましたし、その経緯自体がサムスンの飛躍そのものに結び付くものでした。財閥としてオーナーが大胆に方向性を示すことでの成功であったと言えます。オーナーの指示だから鶴の一声で変わるものかと思っていました。実際、私がサムスンで仕事をしていた時は、上下ラインが極めて強くまた速いと感じたものでしたが、以前はそうではなく、だからこそ危機的と捉えたオーナー李健熙(イゴンヒ)会長による大改革があったのです。サムスンの歴史を理解するのに役立つとともに、日本のこれからを考える参考にもなる一冊です。ただ、2009年の発行ですので、一部の内容は少し陳腐化しています。その部分も、未来予想がずれたと解釈してみるのも面白い読み方かもしれません。

さて、サムスンとサムスン電子の違いはおわかりでしょうか? 私はサムスンで仕事をしてましたが、サムスン電子の仕事ではありませんでした。種明かしは、サムスングループとその構成企業の違いです。日本人の捉えているサムスンと韓国人の捉え方も差があります。コラムの欄でご紹介したいと思います。

バーチャル・エンジニアリング

本田技術研究所の内田さんの著書です。自動車開発関連の方はもちろんのこと、メーカで製品開発をされている方等に広くお読みいただきたい本です。デジタルの世界でどのように効率的に開発を進めるべきか、その考え方が実によくわかる本です。車両特性の評価を実際の道路でバーチャルに評価する時代になっています。さらにその結果を公的に認めるというデジタル認証も検討されています。同時に、本の副題にもありますが、如何に日本の開発スタイルが時代に遅れてきたかの危機感も感じることのできる本です。今や、自動車開発の基幹CADが、ドイツとフランスの会社のものであり、また、IoTでの情報収集とその応用は、シーメンスやドイツの国家的な取り組み、あるいはGEオリジナルが主体です。あらゆる側面で日本が時代遅れになってしまっているという危機感を感じます。
本書は、横浜国立大学 名誉教授の白鳥先生からのご紹介でした。大変に感銘を受けた旨をお伝えしたところ、著者の内田さんとの会食の場を設定いただきました。トヨタ出身の私がホンダの内田さんと深くお話しするという実に楽しい機会でした。

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