水素エネルギー社会(12)ドイツで実用済みの燃料電池鉄道車両

燃料電池で駆動する世界初の鉄道車両 Coradia iLint(写真、出展:ALSTOM PressKit)が2018年9月からドイツで実用運転されてます。ドイツ北部のディーゼル区間100kmでの運用です。最高時速140km、1000km走行可能ということで実用的です。仮に、5往復、実運用時間として15時間程でしょうから、ちょうど丸1日水素補給無しで運用できます。

開発製造したのはフランスの鉄道車両メーカのALSTOMです。同社のウエブサイトに詳しい説明があります。水素エネルギ社会(10)でご紹介した水素協議会にALSTOM社が参画しているのもこのような背景があるのですね。

ドイツ政府の燃料電池技術の国家革新開発予算、ドイツ経済交通省の支援に基づいて、同社のドイツチーム・フランスチームの連携開発です。ドイツでは非電化のディーゼル区間も多く、脱炭素のためには、何らかの対応が必須ということで、ドイツ政府上げての対応になってます。興味深い構図は、ドイツ政府の意向と予算で、フランスのALSTOMで開発製造したという点です。ここからは二つの背景が読み取れます。まずは、EUが機能しているということ、すなわち、国の単位ではなくEU域内としての活動が一般化している点です。もう一点は、フランスでは燃料電池の開発が主導的に進んでいないのかもしれないという点です。この点は、国家的なエネルギ政策も関連していそうで、もう少し調査が必要でしょうが。

ドイツ政府依頼の開発が、やはり鉄道車両の老舗のドイツのシーメンスではなかった点も、興味がある点です。シーメンスはハードの会社から、産業IT等のDX分野への大きく企業形態を変えつつあることも背景にあるのでしょうか。後述するように、ALSTOMのその後の状況から、元々のALSTOMの企業戦略に相乗りしたのが実態かもしれません。

ウィーンで実用運転をドイツで実用運転中の燃料電池鉄道車両

ALSTOMの燃料電池車両は、イギリス、オランダでの導入や試験がアナウンスされてましたが、先月9月11日からは、オーストリアで実用運転(写真、出展:ALSTOM PressKit)が開始されたこともプレスリリースされました。

日立製作所は鉄道車両として欧州に進出していますが、やはり、巨人ALSTOMの前では太刀打ちできないかもしれません。昨日のブログで記事掲載しましたが、JR東日本と協業しての試運転も2022年からで、ALSTOMの開発に遅れること5年です。