水素エネルギ社会(17)水素の安全性<その2>

前回に引き続いてのご説明です。

今回は3点の安全性を解説します。

水素の爆発
高圧水素タンクの破裂
金属の水素脆化

水素の爆発

水素は空気との混合比率 4~75%で爆発します。着火温度は450℃ですので、常温では、火花・静電気・火気等のエネルギ源がないと爆発には至りません。水素の浸透性の高さは前回ご説明したところです。高圧水素タンクからはごくわずかでしょうが、水素がリークしていると考えるべきでしょう。しかし、浸透性が高く、かつ、きわめて比重が低いということは、あっという間に上昇拡散し、仮に日常的密閉空間程度では、容易に隙間から抜けてしまうので、爆発するほどの混合比にはなりません。もちろん、水素を積極的に使用している施設、私の以前の職場なら水素炉周辺、水素タンク開発現場ではリーク特性試験場などは、施設上部に水素検知装置があり、安全をはかっています。

高圧水素タンクの破裂

写真出展:総務省消防庁ウェブサイト資料

水素の爆発ではなく、高圧容器の破裂の視点です。前回、火炎暴露試験(写真出展:総務省消防庁ウェブサイト資料)に関して説明しました。当然ながら、容器がある温度に達すると内部のガス膨張に耐えられずに、容器は破裂します。70MPaの内圧に耐える設計のタンクですと、その際の破裂の凄まじさは容易に推察できるところです。

このような事態を避けるために、万が一の車両火災などを想定して、タンクがある温度に到達すると、ガスをリリースします。図の容器安全弁(PRD)です。
リリースした水素ガスは着火して、火炎放射器のような状態になります。したがって、車両搭載設計上、このPRDの位置や方向は重要な要素と思われます。

金属の水素脆化

水素タンクの構造の歴史は以下の4段階です。

Type 1:金属容器

いわゆるプロパンガスの容器です。LPGタクシーなどに搭載されてます。

Type 2:金属ライナー・炭素繊維フープ巻き容器

同じ容量での貯蔵量UPを狙い、内圧を上げる目的で、炭素繊維で強度を確保しています。
海苔巻きの海苔のように、容器の筒状の部分に炭素繊維を巻き付けます。

Type 3:金属ライナー・炭素繊維両方向巻き容

さらに内圧を上げると、容器の軸方向の強度が不足しますので、その方向の炭素繊維巻きを追加します。ヘリカル巻きと言います。茶筒のフタが飛ばないようにフタから底へ、底からフタへと炭素繊維でぐるぐると巻きます。


Type 4:樹脂ライナー・炭素繊維両方向全周巻き容器

ライナーを樹脂に変更して軽量化を狙います。樹脂のガソリンタンクはポリエチレンですが、こちらはポリアミド(ナイロン)が主のようです。
実は、真の狙いは、金属の水素脆化問題を避けるための樹脂化ではないかと推察しています。金属の例えば結晶粒界に水素が浸透するなどで、金属がもろくなることが知られています。樹脂の疲労現象もそうですが、応力の作用でこの脆化は促進されます。また、傷があり応力集中しやすい場合は脆化進行が加速されます。
内圧を上げるほど、貯蔵量は増えます。従来の35MPaから70MPaとし、容量の倍増を狙っての開発だったようです。当然、水素の圧力が高いほど、浸透しやすくなり脆化の進行を促進します。貯蔵量UP狙いで内圧を倍増してますので、水素充填時の応力変化も2倍になると考えられ、応力の影響も倍増します。水素脆化としてはダブルで懸念が増すことになります。一方、水素脆化のメカニズムは各種要因の複合的と言われていますが、十分には解明できていません。メカニズムを解明し安全性を保障するよりは、軽量化にもなるし、樹脂にしよう、との判断だったのではないでしょうか。あくまでも憶測です。
いずれにしても水素脆化問題はクリアされました。
もちろん、口金部などにはアルミ合金が使用されていますので、それなりの対応はされているでしょうし、何より、容器胴体部(筒状のシリンダー部)よりはるかに負荷が低い部分です。

なお今回ご説明した内容に関しては、それぞれの機関で詳細に検討され、各種報告も多数出されています。
たとえば、
 水素の爆発に関しては、消防庁など、
 高圧水素タンクの破裂に関しては、高圧ガス保安協会など
 金属の水素脆化に関しては、NASAや各大学など。

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