水平リサイクルの最新技術&設備情報

プラスチックのリサイクルは、物性の安定性や汎用的な活用を考えると、ケミカルリサイクルが理想です。海洋プラスチック問題やカーボンニュートラルへの流れもあり、最近はその技術開発が活発になっているように感じています。日本はどちらかといえば、海外技術の導入が主体の動きではあるようですが。

さて、目先のリサイクルとしては、海外ではリサイクルと認められないサーマルリサイクルを減らすことです。
そのためには、まずは、マテリアルリサイクル(水平リサイクル)が現実的です。

マテリアルリサイクル(水平リサイクル) 注目の最新トレンド

水平リサイクル拡大のポイントは次の2点です。

  • 如何に物性を低下させずにバージン材同等の品質を確保するか。
  • 如何に手間を掛けずに低コスト化を実現するか。

今年になって聴講した学会等から、この視点に合致するマテリアルリサイクル関連トレンドを2テーマほどまとめました。

  • 2軸押し出し機機構改良によるリサイクル材物性の向上
  • 再ペレット化や予備乾燥無し、ベント成形機による直接リサイクル

2軸押し出し機機構改良によるリサイクル材物性の向上

最初のテーマ ひとつめは、2軸押し出し機は福岡大学の八尾先生のご研究です。
NEDOの研究テーマとして、昨年から開始された、数年に渡る研究のようです。
以前のブログで、ことしの成形加工学会年次大会の注目講演として報告しましたが、以下に再掲します。

プラスチック成形加工学会 2021年成形加工学会 年次大会
[B206] 高度マテリアルリサイクルによる資源循環
福岡大学 八尾 滋

まだ始めたばかりのご研究ということですが、対応のアイデアがユニークで拡張性が高いように感じました。
2軸押し出し機の先端に樹脂だまりを設けることで、高分子の絡み合いが回復し、バージン材並みの引張特性が得られるというご研究です。

NEDOの長期研究の一貫です。
革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発 材料再生プロセス開発(2020―)

再ペレット化や予備乾燥無し、ベント成形機による直接リサイクル

5月の自動車技術会、6月のプラスチック成形加工学会で発表がありました。
それぞれ、以下で紹介します。

同じ設備を使用していますので、その設備情報もご紹介します。

自動車技術会 2021年春季大会学術講演会 
[073] 廃棄バンパーフェイスのリサイクル物性

池元茂(ボデーガレージイケモト)・杉山直磯・西谷啓吾・加藤秀一(京都工芸繊維大学)・濱田泰以(複層技術研究所)・片岡明雄(日本油機)・住田嘉久(日ノ出樹脂工業)・梅村俊和・野村学(プレジール)・太田智子(中央ビジネスグループ)

修理業者の立場でのリサイクル検討という点がユニークな点です。
自動車の修理として交換頻度が高く、なおかつ他材料と混入しにくい交換バンパーを対象にしての検討です。

【検討のポイント】
ベント機構付きの成形機を使用することで、予備乾燥無しでの直接リサイクル成形です。手間を掛けないリサイクルとして注目されます。

【結果】
代表して 素地バンパ 塗装バンパ 再塗装品での衝撃性比較を示します。

・無塗装バンパはわずかに劣化
・塗装品は衝撃性劣化
・サンダーでの塗膜除去実験では劣化無し、塗膜が物性低下の原因

このほかにも、ガラス繊維を添加してのリサイクルなど、多面的な検討をされてます。ご興味ある方は、同大会の前刷り集をご覧ください。

なお、今回が初の検討ではなく、これまでもご検討されており、その紹介がありました。 以下、参考までに。
・車種や年次に対する差異の検討の実施してきたが、差は見いだせていない。
・切り出し片⇒再生品⇒GF強化再生品で  強度と弾性率は徐々に上昇、 衝撃は徐々に低下の傾向

プラスチック成形加工学会 2021年成形加工学会 年次大会
[B103] 漁網リサイクル PA6のベント成形法とその応用

長井聡(三菱ガス化学トレーディング株式会社)、舩﨑康洋(リファインバース株式会社)、野辺理恵・工藤素(秋田県産業技術センター)、片岡明雄(株式会社 日本油機)

海洋プラスチックの主たる原因となっている漁業資材、漁網のダイレクトリサイクルの取組みです。

ポイントは、PAにもかかわらず、予備乾燥を実施せずに、
図(前刷りより引用)に示すベント式成形機で直接成形している点です。

材料投入部に定量供給装置を使用していますが、ここもポイントかもしれません。飢餓供給まで量を絞り込んでいるかまで聞き取れませんでした。

80℃で6時間の予備乾燥品と物性を比較し、同等であると報告されています。予備乾燥削減という点で、手間暇とエネルギの両面での効果が期待できる取組みです。

ガラス繊維添加による材料改良も検討していますが、これは、前述のバンパー材でも検討されていました。

実験に使用した設備
株式会社日本油機 

ベント式可塑化ユニット

以下は、日本油機のウェブサイトに掲載されている説明図です。

詳細は以下からご確認ください。

ベントユニット