2021年自動車技術会 Keynote Address 「ソニーのモビリティ」

昨年の自技会学術講演はコロナのために開催中止となりました。2年ぶりの今年はオンライン開催です。

その基調講演は、以前から興味のあったソニーの自動車に関するものでした。

プログラム|2021年春季大会|公益社団法人 自動車技術会 (jsae.or.jp)

視聴の抜粋と感想をコメントします。
(記事中の画像出展: ソニーグループのVISION-Sのウェブサイトから)

VISION-Sプロジェクト:ソニーのモビリティに対する取り組み

川西 泉 氏(執行役員 AIロボティクスビジネス担当)

ビジョンSプロジェクトの初公開は、昨年のCES2020です。

ソニーがEVということで大きな話題になりました。当時から、最大の関心事は、ソニー独自でクルマの開発が可能なのかという点でしたが、今回の講演でクリアになりました。

結論から言って、安全に実走行できる車という点では、マグナ・シュタイヤーの全面的な協力を得ていますし、同社に作製も委託しています。なお、このポイントは、走行するBodyの設計・製造という点です。逆に言えばそれ以外、コンセプトは当然、内外装のデザインや自動走行のためのセンシングや情報処理などはソニー独自です。

Body部分さえそろえることができれば、従来の自動車メーカ以外でもEVはつくれることとなります。

先に紹介した中国の新興高級SUVの自動走行EVメーカのHuman Horizonsは、自動車メーカ役員経験者が中核となり、人工知能の専門家等を招聘した会社です。安全に走るBodyはある意味自前で対応しています。

携帯電話はOSの共通化スマホ化で、垂直分業から水平分業となり業態が劇的に変化したことに触れ、暗に自動車でも同様の変化が起きることを示唆していました。そう考えた場合、ソニーはAVに強みがある会社であるが、AIロボティクス(以下にまとめます)にも強みを発揮しつつあり、自動車の水平分業もにらみながら、自社のソフト技術を中核とした自動車開発にチャレンジしたと言えるでしょう。しかし車体設計ノウハウは皆無であり、マグナ・シュタイヤー社の協力を仰いだという点は、前述しました。

さて、EVプラットフォームを採用することとなりましたが、このプラットフォームは走行のメカニカルをすべて含んだ、大きな平面の四隅にタイヤが付いたイメージです。これを活用すれば、上部Bodyを各種準備することで多種のBody形状、クーペからSUVまでに対応が可能とも説明していました。なお、安全性と法規制対応のため想像以上のデザイン制約があったそうです。走らないモックならどんなクルマでも形状を示せるが、安全走行まで考慮すると、その前提での形状開発が必要ということです。

AIロボティクス  CloudにつながるIoTデバイスの経験の活用

Aibo(犬型愛玩ロボット) 自律歩行
Airpeak(業務用ドローン) 自動運転
  ↓
Vision S(試行的EV車両) ADAS/自動運転

AIロボティクスの基本は、以下の流れであり、自動運転の同じ考え方

気付く(センシング)
 ↓
考える
 ↓
行動する

Vision Sにおける 「3つのコンセプト」と対応状況

SAFETY-イメージセンシング/ADAS 

40個のセンサーを搭載 

イメージ&ToF1 8個
 - ToFカメラ 運転者の動き・距離を把握、顔認証、ハンドジェスチャー)
 - 自動運転用にイメージセンサーを改良 
   ・高感度(低照度)
   ・ダイナミックレンジUP(トンネル内外対応など)
   ・LED信号フリッカー対策
     (点滅対応、非点灯状態を撮像しないように)
Lidar 4個
 - 前後バンパの中央下部
 - 左右のフェンダ後部のドア見切り部に設置)
超音波・レーダ 18個

Level2目標、 将来はLevel4へversionUP

ENTERTAINMENT

360 REALITY AUDIO
  各音源を仮想的に3次元配置、 
Human Interface
  巨大な横一枚パネルの Panoramic Screen
   サイドミラーはカメラで、Panoramic Screen両サイドに映写
  タッチパネル、タッチ振動入力、ジョイスティックなど 視野移動を最低限に 

ADAPTABILITY

コネクト、クラウド、サステナビリティで持続的適用性
 5G
 Cloud AI
 Software Update
 Sensing(Cloud でも)
 Security

講演では触れられていませんでしたが、補足の情報です。

フロント・リアに200KWモータでAWS
エア・サスペンション
広いパノラマルーフで運転席上部から後部窓まで広がり解放感がある。

参考まで  マグナ・シュタイヤー

オーストリアの車両開発と製造の受託会社
約30車種、370万台以上の生産実績
たとえば、
 メルセデスベンツ Gクラス、 BMW 5シリーズ、 ジャガー(電気自動車)など
 兄弟車である BMW Z4(2018~)と トヨタ GRスープラ(2019~)も(写真は、トヨタ・BMWのサイトから)